4月12日は「パンの日」。日本において最初にパンが製造された日（1842年4月12日）にちなんで制定されており、毎年この日になると全国各地でパンにまつわるイベントや特集が組まれます。もはや私たちの食卓に欠かせない主食のひとつとなったパンですが、地域によってその価格や消費量（支出）には大きな差があることをご存じでしょうか。本稿では、総務省「小売物価統計調査（動向編）」から得られた食パン・あんパン・カレーパンの価格ランキングと、「家計調査（家計収支編）」の「二人」シートに基づくパンの月間支出額を比較し、各地域のパン事情を探ってみます。
1. 小売物価統計による「パン」単価ランキング
1-1. 食パン（1021）1kgあたり
総務省「小売物価統計調査（動向編）」2023年の年平均データより。
上位5都市（高い順）
- 那覇市：688円
- 徳島市：579円
- 和歌山市：579円
- 松江市：578円
- 水戸市：575円
下位5都市（安い順）
- 函館市：297円
- 郡山市：303円
- 八戸市：319円
- 秋田市：363円
- 横須賀市：384円
1-2. あんパン（1022）100gあたり
総務省「小売物価統計調査（動向編）」2023年の年平均データより。
上位5都市（高い順）
- 今治市：137円
- 那覇市：134円
- 山口市：121円
- さいたま市：120円
- 松江市：120円
下位5都市（安い順）
- 長岡市：80円
- 小山市：85円
- 松山市：87円
- 岡崎市：88円
- 函館市：90円
1-3. カレーパン（1023）100gあたり
総務省「小売物価統計調査（動向編）」2023年の年平均データより。
上位5都市（高い順）
- 那覇市：170円
- 今治市：154円
- 佐世保市：139円
- 松江市：134円
- 和歌山市：133円
下位5都市（安い順）
- 富士市：96円
- 八戸市：100円
- 佐倉市：102円
- 鳥取市：102円
- 長岡市：103円
2. 家計調査「二人」シートからのパン支出ランキング（上位10都市）
家計調査（家計収支編）「二人」（2025年1月）より。
- 神戸市: 3,445円
- さいたま市: 3,208円
- 広島市: 3,181円
- 大阪市: 3,150円
- 長崎市: 3,126円
- 松山市: 3,107円
- 奈良市: 3,076円
- 福井市: 3,075円
- 岡山市: 3,032円
- 徳島市: 3,026円
3. 価格と支出の関係、及び地域性（ChatGPT o1による分析）
3-1. 単価と支出の相関
- 那覇市はパンの単価では上位ですが、支出額トップ10には入っていません。このことは「価格が高くても、必ずしも支出全体が多いわけではない」ことを示唆しています。
- 例えば、那覇では離島ゆえに高価格になりがちな一方、米食が根強い・パン消費量自体がさほど多くないなどの背景があるかもしれません。
- 逆に神戸市や大阪市など関西圏は、価格面で突出して高いわけではない（※今回提示された小売物価統計の上位にはあまり出ていない）にもかかわらず、支出額は全国的に高いという結果になっています。
- 関西はパン文化が比較的根付いており、食パンや惣菜パンを日常的に多く消費する傾向があるといわれます。
- ベーカリーやパン屋が非常に多く、消費を促進している可能性も高いです。
3-1-1. 地域の食文化・世帯構成
- 神戸市は、異人館や洋菓子などの西洋文化との結びつきが強い歴史的背景もあり、パンの消費文化が根付いている地域として知られています。
- 広島市も「お好み焼き」文化がある一方で、菓子パンや惣菜パンなど地元ベーカリーチェーンが発達していることが特徴です。
- さいたま市は首都圏ベッドタウンとして、共働き世帯が多い環境や、駅前のコンビニ・パン屋の多さがパン消費を押し上げる要因になり得ます。
3-2. まとめ：高価格と高支出は必ずしも一致しない
- 単価が高い＝多く買う という直線的な関係には必ずしもなっていないことが、今回のデータで確認できます。
- 地域特性（輸送費・地元産原料の有無・需要量など）や、食文化（米食 vs. パン食の割合、パン屋の数、世帯あたりの消費嗜好）によって、価格と支出のバランスが変動していると考えられます。
最後に
- 価格の上位・下位に出てくる地域と、家計調査の支出上位に出てくる地域には必ずしも強い関連が見られないことが、本データの大きな特徴と言えます。
- 都市ごとの物価事情だけでなく、ローカルなパン産業の発達状況、住民の食習慣、ベーカリーやコンビニなどの流通構造の違いが複合的に反映されていると考えられます。
こうした地域別のパン価格・消費動向をさらに詳細に見るには、
- 個別製パンチェーンの分布やシェア
- ベーカリーの数やコンビニの密度
- 観光需要の有無
などをあわせて検討すると、より具体的な要因が浮き彫りになるでしょう。
以上のように、単価と支出の両面から見てみると、パンは「地域の食文化・供給体制」が色濃く反映される食品であると考えられます。
4月12日のパンの日にちなんで、こうした統計を参考に各地域のパン事情を覗いてみるのはいかがでしょうか。お気に入りのパンを堪能しながら、データから読み解く地域差にも思いを馳せてみると、より一層パンライフが深まるかもしれません。
統計局ホームページ/小売物価統計調査（動向編）
小売物価統計調査（動向偏）は、時系列的な物価動向を明らかにし、消費生活に関する経済政策の基礎資料として利用されています。
www.stat.go.jp
統計局ホームページ/家計調査
家計調査は，一定の統計上の抽出方法に基づき選定された全国約9千世帯の方々を対象として，家計の収入・支出，貯蓄・負債などを毎月調査しています。
www.stat.go.jp
